イリオモテヤマネコのここがすごい!〜タンネウシコラム6月号

イリオモテヤマネコのここがすごい!

村上隆広

イリオモテヤマネコ

 

独立種ではないイリオモテヤマネコ
竹富町と斜里町はそれぞれが日本の南西端と北東端にある国立公園を有する縁で1973年に姉妹町となりました。竹富町にある国立公園は西表石垣国立公園です。その中でも独特な生態系で知られる西表島を代表する種がイリオモテヤマネコでしょう。体重は3~4㎏、体長は50~60センチとイエネコとサイズに大差はありません。イリオモテヤマネコの特徴は目のまわりと額に白いラインがあることですが、街中で見かけたら普通の人にはイエネコに見えることでしょう。そして、かつては独立種と考えられていたのですが、遺伝子研究が進むにつれてアジアに広く分布するベンガルヤマネコの亜種とわかってきました。しかし、それでもイリオモテヤマネコはとても貴重な存在なのです。どこがすごいのでしょうか。

幅広い食べ物
ベンガルヤマネコは中国や東南アジアに広く分布する種です。このうち大陸にいる集団と島に生息している集団とは遺伝的に大きな違いがあるそうです。イリオモテヤマネコも亜種とはいえ、20万年以上前に大陸から離れた島に生息しているので、遺伝的に大きく異なっているのです。そして、生態にも大きな違いがあります。他地域のヤマネコはネズミなど小型の哺乳類に大きく依存していますが、イリオモテヤマネコはその他に鳥類、爬虫類、両生類、昆虫類など多様なものを食べます。イリオモテヤマネコを研究している琉球大学の伊澤雅子さんによると、西表島には在来のネズミ類やウサギ類がいないので、幅広い種類の動物を食べるように適応してきたそうです。面積がわずか300平方キロの島で20万年以上も絶滅せずに生き延びてこられたのは、奇跡的といえるでしょう。

交通事故の危険
西表島の自然が豊かといっても、イリオモテヤマネコにとって全く安心というわけではありません。西表島では毎年ヤマネコがはねられる交通事故が起きていて、環境省によると2018年には9頭が死んでいるそうです。姉妹町友好都市交流記念館に展示されている剥製(上の写真)も、交通事故で死んだ個体の提供を受けて製作したものです。西表島に約100頭しか生息していないイリオモテヤマネコは、大きな脅威ととなりあわせの生活をしているのです。何万年にもわたって独特の進化をしてきたイリオモテヤマネコが、いつまでも西表島の豊かな自然の象徴であってほしいですね。

タンネウシ6月号表面
タンネウシ6月号裏面

三浦

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