ヤマブドウは禁断の味?〜タンネウシコラム2月号

村上 隆広

よく熟したヤマブドウ(2018年10月撮影)

みんな大好きヤマブドウ
厳しい寒さが続いています。もう実りの秋は遠く過ぎ去ってしまいましたが、動物たちの足跡を追いかけると、真冬になってもヤマブドウを食べていることがわかります。12月に斜里岳の山麓を歩いていたら、タヌキがヤマブドウを食べた跡を見つけました。どこかに残っていたものを見つけたのでしょう。ヤマブドウは多くの動物たちの大好物になっていて、知床の哺乳類ではタヌキのほかにもヒグマ、キツネ、クロテンなどの糞から、たくさんのヤマブドウの実が出てくることがあります。彼らにとって、ヤマブドウはサルナシ(コクワ)と並んで、とても人気の果実なのです。もちろん私たち人間にとっても秋の楽しみのひとつですね。

犬にブドウを食べさせてはダメ?
そんなヤマブドウですが、犬を飼っている人にとっては注意が必要です。それは、ブドウを犬に与えると中毒になるといわれているためです。アメリカで2001年に、ブドウやレーズンを大量に食べた犬が中毒で腎不全になったという症例が初めて報告されました。その後世界各地で報告があり、日本でもシーズーやテリアが死んだ事例があります。症状は嘔吐や下痢、食欲不振などで、重篤な場合は腎不全などを経て死に至るそうです。盗み食いした犬が発症したり、飼い主が誤って与えたりして中毒になるようです。

ヤマブドウも危ない?
これまでに中毒が報告されているのは栽培されているブドウですので、もしかするとヤマブドウでは中毒を発症しない可能性もあります。たとえば、栽培のときに使われる農薬が原因となっているという説があります。その説が正しいなら、農薬を使っていないヤマブドウなら中毒にならないかもしれません。ヤマブドウは動物たちにおいしい果実を食べてもらい、別の場所で糞から出た種が成長することで分布を拡げてゆく植物です。それなのに、食べた動物が中毒になるとしたら、なんだか矛盾している気がします。しかし、ブドウ中毒を起こす原因物質はいまだにわかっていません。ヤマブドウにもブドウにも共通する成分が中毒を引き起こしていることも十分考えられます。森に犬を連れていっても、ヤマブドウは食べさせないのが無難でしょう。

タンネウシ2月号(表面)
タンネウシ2月号(裏面)

横山

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