特別講演会開催のご報告「サケの現在と未来」〜タンネウシコラム1月号

三浦 一輝

講演会の様子

2020年11月8日(日)に特別講演会「サケの現在と未来〜今私たちにできること〜」を開催しました。4名の講師の方にご講演いただき、計94名の方にご来場いただきました。内容の一部をご紹介します。

帰山 雅秀さん(北海道大学)「サケが育つ海で今起きていること〜ふるさとのサケを守る〜」
サケは川で生まれ海に降ると、数年の間海で生活します。このため、海の環境とサケの生活は密接に関係しています。近年、海水温の上昇により、孵化場サケが生き残りづらくなってしまっています。今後は人工ふ化放流だけでなく、環境変化への適応力がある野生魚を守るために、川環境の修復が必要です。

宮腰 靖之さん(北見管内さけ・ます増殖事業協会)「人工ふ化放流によるサケの資源づくり」
北海道では1800年代後半から、サケのふ化放流が行われてきました。現在では高い技術が確立され、自然環境における卵から稚魚期の生き残りが10~20%なのに対して、人工ふ化では80~85%と高い数字を維持できます。最近では、より野生に近い稚魚づくりにも取り組んでおり、餌の与え方を工夫して人馴れしにくい稚魚を育てる試みも行っています。

卜部 浩一さん(道総研さけます・内水面水産試験場)「サケの自然産卵と産卵環境保全の重要性」
分布の南限にあたる日本のサケは、本来、温暖な環境に適応してきました。斜里町でもすでに実施されているように、温暖な環境に適応した野生魚の遺伝子を、高い技術を持った人工ふ化放流に取り入れていくことが重要です。そのための川環境整備や公的制度作りが必要です。

森 高志さん(斜里町水産林務課)「鮭漁業と資源への取り組み」
斜里町では、人工ふ化放流に加えて、資源構造の安定化や生物多様性の保全を目指して、サケの産卵環境や遡上阻害などの調査を網走市や斜里町、各市町の漁業協同組合さんらと協力して行っています。また、遡上阻害となっているダムや堰堤の改良、簡易魚道の設置なども行っています。

※当日、時間の都合上お答えできなかった質問への回答を、同様に知床博物館協力会HPに掲載しています。併せてご覧ください。
URL: http://shiretoko-ms.sakura.ne.jp

タンネウシ1月号(表面)
タンネウシ1月号(裏面)

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