ヌマガレイ 川をおよぐ左向きのカレイ?〜タンネウシコラム7月号

ヌマガレイ〜川をおよぐ左向きのカレイ?〜
三浦 一輝

知床の川を泳ぐヌマガレイ(2020年6月20日 撮影)

ヌマガレイという魚を見たことがありますか?カレイの仲間で、最大で90 cmほどになる魚です。他のカレイに比べて食卓に並ぶ機会は少ない種類です。しかし、生き物としてとても面白い特徴を持っています。

左カレイに右ヒラメ!?
カレイと形が似た仲間に“ヒラメ”という魚がいます。多くの場合、カレイとヒラメでは眼のついている向きが左右で逆になっています。見分け方として「左ヒラメに右カレイ」という言葉を覚えている人も多いのではないでしょうか。しかし、日本で見られるヌマガレイはカレイの仲間であるにも関わらず、左向きに眼がついています。このため、「左ヒラメに右カレイ」というルールだけでこの種類を見分けるとヒラメと間違えてしまうかもしれません。一方、不思議なことにカリフォルニアやアラスカなどで見られるヌマガレイの30〜50%は、眼が日本とは逆の右向きについているそうです。眼の向きは遺伝によって決まると考えられていますが、なぜ日本のヌマガレイの眼が左向きなのかは未だ謎のままです。

海水魚?それとも淡水魚?
“カレイ”と聞くと、海に暮らす海水魚と思う方も多いと思います。しかし、ヌマガレイは川の中流部でも見られる唯一のカレイです。「え、川にカレイ!?」と驚く人も多いと思います。斜里周辺でも、斜里川の中下流部やウトロの川でもその姿を見ることが出来ます。地形の急峻な知床半島の川では、中下流部でも石が大きく、流れが速い環境があり、カレイの生息環境のイメージからかけ離れた場所でもヌマガレイが泳ぐ姿を見られます。一方で、漁師さんに聞くと、海でもヌマガレイが獲れると言います。ヌマガレイは海水魚なのでしょうか?淡水魚なのでしょうか?実はどちらも正解です。ヌマガレイは沿岸域でも生活し、北海道では初冬の頃に川や沼にいた個体も沿岸の浅い海域に移動して産卵します。一生の中で海水と淡水を行き来するため海水魚であり、淡水魚でもあると言えるのです。
普段の食卓にあまり並ばない魚でも、ヌマガレイのように面白い生き物もたくさんいます。美味しい魚で胃袋を満たすだけでなく、時には面白い生き物で「へ〜!なんでだろう?」と好奇心も満たしてみてはいかがでしょうか?

タンネウシ7月号(表面)
タンネウシ7月号(裏面)

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