天然記念物の保護と博物館 〜タンネウシ3月号

阿部公男

知床博物館での生物飼育

 知床博物館では、開館の時から天 然記念物のオオワシとオジロワシを飼育しています。正確には博物館設置以前の資料館時代から飼育がおこなわれていて、以前はタヌキや鹿、シマフクロウなども飼育していました。

オオワシのカナヤマ

知床博物館では、オオワシ2羽とオジロワシ1 羽を飼育していましたが 1月24 日にオオワシのカナヤマが死亡しました。数年前からは、高さ1メートルほどの止まり木に飛び乗ることも少なくなり地面にいることが多く、飼育舎を訪れる方から心配の言葉もたくさんいただいておりました。そのカナヤマは、昭和63年2月15 日16時40分頃に町内の金山川から100メートルほど斜里寄りの国道わきで左翼に傷を負っていたところを保護され博物館にやってきました。しかし、回復せず放鳥も出来なかったことから、飼育がはじまり、昭和 63 年 2 月の保護から数え約 35 年の飼育期間となりまし た。保護してくれた方が、当時の状況を詳しく記録されています。地域の資料などを収集し将来に引き継ぐ役割を持つ博物館にとって、このような情報が整っていることは重要なことになります。

保護、そして調査研究へ

 博物館に持ち込まれる鳥獣の多くは、ケガや衰弱により動けなくなっているところを保護され連れてこられます。回復したものは、放鳥獣されますが、 残念ながら死亡した鳥獣の一部は剝製や標本として資料化され、学習活動や地域の自然環境の研究等に役立てられています。博物館はこのように生きた資料(保護鳥獣)の受入れ、その後の飼育等の記録、野外展示の解説を行います。そのような調査研究により専門的知識や技術が向上し、また幅広い分野の人材との情報交換により、道東やオホーツク沿岸の地域文化や自然の継承が図られるようにと努めています。

残ったワシたち

カナヤマが死亡した現在も、オジロワシのユウベツとオオワシのロコが飼育されています。ユウベツは、平成 4 年 12月28日に湧別町内で左翼にケガをしていたところを保護され、ここへ来ました。オオワシのロコは、昭和49年12 月2日、ウトロの海岸で衰弱していたところを保護され、博物館ができる4 年前から飼育されており、その期間は49年目となりました。オオワシの飼育記録は円山動物園の51年が国内最長とされており、ロコの飼育期間はこの記録に迫っています。これからも長生きして国内最長記録を更新してほしいと願い飼育をしていますので、是非、知床博物館のワシ達も観察してください。

タンネウシ3月号表面

タンネウシ3月号裏面

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