知床半島の滝、イロイロ〜タンネウシコラム5月号
知床半島の滝、イロイロ
合地信生
知床半島にはオシンコシンの滝など数多くの滝があり、知床観光の重要な景観となっています。知床半島の斜里側には海底火山と陸上の火山活動の地層が多く、そしてそれらの層が流氷で削られ、現在では断崖地形をしています。一般に滝は性質の異なる地層の境界に生まれます。そのため、知床半島基部から先端部を滝の形成と関係した地層に注目し、3つのブロックに分けました。
(1) 貫入岩の垂直な表面を流れ落ちる滝(遠音別川~ウトロ市街地)
海底堆積層の割れ目を伝い、地下深くから溶岩が上がってきました。しかし海底までに到達せず、地中で固まった貫入岩地域です。貫入岩の海側にあった泥岩などの堆積層は流氷などによる浸食作用で削られ、現在では貫入岩のほぼ垂直な表面を川が流れ、滝となっています。流域面積が広く、豊富な水量の滝が多いようです。オシンコシンの滝や三段の滝がこのタイプの滝です。
(2) 溶岩の間から流れ落ちる滝(ウトロ幌別川~知床五湖)
羅臼岳~知床硫黄山にかけては陸上火山活動が最も活発な地域で、斜里側では溶岩が海まで流れています。溶岩は何枚も流れており、その間が地下水の通り道となり、海に注いている場所が滝となっています。溶岩は風化に強いため、高い断崖を作っており、落差の大きい滝があります。フレペの滝(乙女の涙)や知床五湖から流れ出た水が落ちている滝がこのタイプです。
(3) 海底火山活動の断崖を流れ落ちる滝(カムイワッカ川~先端部)
海底に噴出したマグマが海水で急冷された地層(水冷破砕岩)が分布しています。(1)の泥岩堆積層に比べ、水冷破砕岩は浸食に強く断崖となっていますが、(2)の溶岩よりは規模の小さな断崖です。知床半島先端部の川は流域面積や水量は少ないですが、各河川は水冷破砕岩の断崖から一気に海に流れ落ち、数多くの滝となっています。カムイワッカの滝、カシュニの滝がこのタイプです。
羅臼側は、流氷による浸食作用が少ないため貫入岩の周りの地層が残っており、(1)のタイプは少ないようです。また、陸上火山活動の溶岩も海岸までは流れておらず、フレペの滝のような溶岩の間から流れ落ちる(2)タイプも見当たりません。そして水冷破砕岩が半島基部から先端部まで続いていますので、羅臼側の滝はほとんどが水冷破砕岩の断崖を流れ落ちる(3)タイプの滝です。知床半島の滝は羅臼側に比べ、地層のバラエティーに富む斜里側の方がイロイロなタイプの滝が観察できます。
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三浦
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