知床火山活動と太平洋プレートのゆらぎ〜タンネウシ5月号2024

合地 信生
 知床半島は火山活動で生まれた半島です。地熱が上昇し、最初に生まれたマグマは地上への道(割れ目)がないため地下で塊で固結(貫入岩)しました。その後割れ目が生まれ、マグマは地上へと進み、海底火山活動が始まります。そして横からの圧縮とさらに続いた火山活動で上昇し、陸上の火山活動へと至っています。火山活動がプレート運動方向の変化とどの様に関わっていたのかを考えてみましょう。
 太平洋プレートはほぼ北西方向に沈み込んでいますが少しのゆらぎ(方向変化)があり、千島海溝に対してほぼ直角から斜め方向の間を図1~4 のように変化しています。また知床半島の火山活動もそれに連動して変化しています。4つの時代に分け、時代ごとの火山活動の特徴をまとめてみました。

①500万~300万年前  プレートは北西方向(海溝に直角) 越川層が海底で堆積(網走付近で海底火山活動)。
②300万~200万年前 北西~西北西(直角~斜め) 斜里側の貫入岩の固結とウトロの海底火山活動の始まり。
③200万~100万年前 西北西(斜め)羅臼側の活発な海底火山活動とその終結。標津で陸上火山活動始まる。
④100万年前~現在 北北西(直角)斜里側が活発な知床連山の火山活動。

 千島海溝に直角に太平洋プレートが沈み込むと、沈み込み角度は浅くなり、海溝から離れた場所で火山活動が生じます(図5)。①での知床半島より北西側の網走での海底火山活動、そして④の連山での火山活動で海溝から一番遠い知床硫黄山の斜里側での山体崩壊と新噴火口での最近の硫黄噴出は直角方向での活動です。
 一方、斜め方向に沈み込むと、沈み込み角度は深くなり、海溝近くで火山活動が生じます。また割れ目が生まれ、地面は上昇します(図6)。②では網走付近から海溝側の知床半島に火山活動が移動します。そしてオシンコシン粗粒玄武岩やオロンコ岩の大規模な貫入岩活動、そして割れ目が生まれての海底火山活動、さらに③の陸上火山活動の始まりはどちらも斜め沈み込みによる活発なマグマ活動と地面の上昇が考えられます。

 道東の火山活動が始まる1,500万年前は直角に沈み込んでおり、海溝から離れた雄武付近で火山活動がありました。道北に険しい地形がないのは古い火山活動で浸食作用が進んでいるためでしょう。このように知床半島および道東の火山活動が少しずつ地球の運動との関係で分かりつつあります。

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