発掘調査いちねんせい〜タンネウシコラム6月号〜
「発掘調査いちねんせい」
平河内毅
2009年9月、大学1年の夏。子どもの頃に憧れた発掘現場に立ち、シャベル片手につなぎと麦わら帽子という完全な畑仕事スタイルで、遺跡とは思えない畑をひたすら掘るというのがはじめての発掘体験でした。
私の母校には北海道内では珍しく考古学研究会というサークルがあり、毎年夏休みになると美味しい食事が出てくるペンションに泊まり込み、朝早くに小さなバスに揺られて発掘現場へ向かい、日が落ちて手元が見えなくなると帰ってくるという日々を数十人の仲間たちと過ごしていました。
専門用語がわからない
発掘現場に入って最初の関門は、調査の技術などではなく、専門用語でした。先輩からはごく当たり前のように「ホウガンソウはエンピじゃなく、イショクね」、「点上げした後、面で下げて行こう」、「もうちょっと壁立てて」などと指示されますが、発掘調査1年生の我々には何のことやらさっぱり。先輩に素直に聞ける雰囲気でもなかったので、とりあえず先輩の反応を見つつ、怒られたら不正解、無言だったら正解、というように専門用語を解読する作業が1日目の主な仕事でした。
はじめての発見!
こんな素人でもそれなりに掘っていれば何かしら見つかるもので、記念すべき初めての発見は直径5ミリほどのたいへん小さな黒曜石のかけらでした。魚のウロコのように小さく薄いものでしたが教授のもとへ持って行くと、ナイフなどの石器を作ったときに出来たものだと説明されました。大昔の人々の道具づくりの痕跡を自分が発見したのだという感動は、見つけた黒曜石の小ささとは比べ物にならないほど大きなものだったのを覚えています。1つ見つかると、その周囲から同じようなかけらが次々と出てくるので、見つけた石器を袋に入れては竹串で発見場所を示すという作業に夢中になりました。自分の足下が黒曜石でいっぱいになると、あの専門用語「点上げした後、面で下げて行こう」が発動します。初日の解読作業の甲斐あって、この欠片1つずつの発見された場所を図面に記録する作業が「点上げ」、欠片を取り上げた後にまた周囲と高さを揃えながら掘り下げて行く作業を「面で下げて行こう」だとすぐに分かりました。
こうした日々を経て、少しずつ現場に馴染んでゆき、その後考古学の世界へとのめり込んでゆきました。
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平河内
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