エゾアカガエル〜冬越しはどこで?〜タンネウシコラム7月号
エゾアカガエル〜冬越しはどこで?〜
三浦一輝
エゾアカガエル
体長5〜7cmほどのカエルです。北海道とサハリンに生息し、斜里町でも、山間部から平野部まで広く見られます。アカガエルという名前ですが、茶色っぽい色の個体が多いです。雪融けが進む春先に、湿地や森の中の小さな池など、浅い水場に集まって産卵します。その時期には、オスがフィフィーやミャミャーといった高い声で鳴いてメスに求愛し、好きなメスを見つけると、写真のように背中に抱きついて離れません。エゾアカガエルは夏にも見かけることができますが、春先の1〜2週間を除いてその鳴き声を聞ける機会はほとんどありません。春先のまだ寒い日が続く頃にこの声が聞こえてくれば、だんだんと暖かい季節が近づいてきていることを知ることができます。
どこで冬を越す?
エゾアカガエルに限らず、寒い地域に棲む生物は厳しい冬を乗り越えなければなりません。寒さの厳しい知床や道東地域では、エゾアカガエルはどこで冬を越すのでしょうか。
カエルだから土の中では?と思う人も多いかもしれません。確かに、エゾアカガエルも、冬に森の中の朽木や土の中から見つかることもあります。一方、エゾアカガエルは水が流れる川の中でもよく冬越しをすることがわかってきました。川底に溜まる落ち葉の下や、大きな石の下の隙間に隠れて冬を越します。
では、なぜエゾアカガエルは川で冬を越すのでしょう。川を選ぶメリットが2つ考えられます。1つは、凍らない点です。冬の気温が−20度にもなる道東地域では、浅い水や土中は簡単に凍ってしまいます。凍ってしまってはカエルは死んでしまうので、凍らずに眠れる環境を探す必要があります。そんな時、水が流れる川は川底まで凍ることが滅多になく、安心して冬を越せる環境なのです。2つ目は酸素が豊富であるということです。本来、陸上では肺呼吸をするカエルですが、水の中で冬を越すには皮膚呼吸で必要な酸素を賄わないといけません。同じ水の中でも、池の泥の中などでは、カエルにとって必要な酸素が不足しやすくなります。一方、川では酸素を豊富に含んだ水が常に流れているので、酸欠の危険性が低くなるのです。このように、エゾアカガエルは厳しい寒さにも負けないように工夫して生きているのです。
近年、冬の知床では、サケが産卵のために掘った産卵床の中から、冬越し中のエゾアカガエルが見つかることがあります。サケが産卵する場所は温かい湧水があることも多く、寒い冬を過ごすのに快適な寝床なのかもしれません。
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三浦
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