ユキウサギの謎〜タンネウシ2月号
ユキウサギは冬に何を食べる?
数年前、雪融けの頃に斜里岳の登山道を歩いていたら、ユキウサギの丸い糞がコロコロ転がっていました。何を食べていたのだろうと周りを見回しましたがよくわかりません。そこでふと頭上を見るとダケカンバの枝にユキウサギの食べ跡がいくつもありました。木は2mくらいの高さですので届かないように見えます。しかし、斜里岳の中腹だと1.5mを超えるような雪が積もります。その高さの雪ならユキウサギでもダケカンバの下枝に届くので食べられたのでしょう。そのときは標高600~1300mまでの間に約200個の糞がありました。
それ以来、冬にユキウサギが何を食べているのか興味をもって調べていますが、頻繁にみられるのは若い木の枝を食べた跡です。鋭い歯で噛み切るので、ナイフで切ったような切り口が特徴です。とくにヤナギやカンバの若い木があると熱心に食べているようでした。あちこちで雪を掘り返した跡もみられます。道路に面した斜面に植えられた牧草やササ、枯れたヨモギの葉などを食べている跡もあります。ササや枯れ草は食べ跡がわかりにくいので、実際にはもっとたくさん食べているのかもしれません。
もう一つの疑問
ところで、ユキウサギについてはもう一つ不思議に思っていることがあります。それは、斜里岳や海別岳の山麓ではユキウサギの足跡や糞をよく見かけるのに、半島の中央部から先ではほとんど見かけないことです。高山帯などごく一部で痕跡のある場所もありますが、標高の低い地域では滅多にありません。ウトロに古くから住んでいる方に聞くと、かつてはよく見かけたそうです。実は、ユキウサギは戦後から1970年頃まで北海道各地で農林業に大きな被害を与えるほどたくさん生息していましたが、その後北海道全体で急激に減少したようです。減少原因については、ユキウサギの好む造林地が減ったことや捕食者である猛禽類の増加などいくつか可能性がありますがはっきりしていません。また、シカの増加が関係しているかもしれません。シカが広葉樹の下枝やササなどをたくさん食べてしまったため、雪が積もってもユキウサギが食べられるものがないという説です。自然環境はさまざまな変化が同時に起きるので原因をはっきりさせるのは難しいですが、身近な動物の不思議を少しでも明らかにしてみたいです。
村上隆広
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