斜里町の「今」を知る!知床の生きものニュース3選!!〜タンネウシ12月号2024
臼井 平
イワウベツ川のダムより上流部でついに絶滅?今年魚類を確認できず!
世界遺産地域を流れるイワウベツ 川で魚類のモニタリング調査を始めてから3年が経過しました。この調査によ りダムが生息する魚(ヤマメとオショロコマ)に多大な影響を与えていることが明らかになりました。1 基のダムを介して上流には殆ど魚は生息しておらず、下流との生息密度は20倍~50倍ほどの違いがありました(詳しくはタンネ374 )。また、ダムより上流では親魚と思しき大型の個体は毎年、数匹採集されるものの、近年産まれたと思しき仔魚は一度も確認できていませんでした。「世代交代がうまくいっていないから、近いうちに絶滅するかもね … 」などと 、未来を憂いていたところ、今年2回実施した調査でついにダムから上流部で魚が全く確認できなくなりました。このダムができてからわずか約40年、河川の分断による影響力の強さを感じると共に、3 年後に控えたこのダムの改良&開通に大きな期待を抱かずにはいられません。
斜里川でニホンザリガニ初確認!
今秋、東京農業大学と知床博物館の調査により、斜里川流域で絶滅危惧種に選定されているニホンザリガニの生息を初めて確認しました。 今回の発見で特に面白かったのが、見つけた場所の環境です。通常、ニホンザリガニは湧水がしみ出るような浅く、流れの緩やかな細流に生息しています。しかし、今回見つかった環境は深く、流れも強い渓流です。過去の文献にある本来のニホンザリガニの生息適地と比較すると、水深も流速も3倍以上ありました。この劣悪な環境の中でも流れを遮る大きな石や人工の護岸を利用して生息していたのです。
かつては、斜里平野の大湿地帯をゆったりと流れていた川の多くが農地開拓で直線化・水路化されてニホンザリガニの生息地は激減したと考えられます。しかし、僅かな生息適地が残っていれば、彼らは逞しく命を紡げられる可能性がある事を教えてくれました。 ※本研究の成果は『東京農業大学紀要』へ現在投稿中です。
ウトロで大量のワカサギ遡上
今年 9 月中旬に、「遠音別川で小魚の群れが突然あらわれて、川面が黒く染まっている」と町民から情報をいただきました。早速、現地へ行き橋の上から覗いて見ると、確かにサケと一緒に数千~数万匹の小魚たちが群れています。早速、川に降りてカメラを水中に沈めてみると、なんとワカサギの群れでした。(春)を除きワカサギが小規模河川に遡上することは、これまで知られていません。この群れは、わずか1週間ほどで姿を消してしまいました。
しかし、この2週間後になんとウトロを流れるペレケ川で再び大量のワカサギの遡上を発見しました。斜里町内を流れる排水路でも冬にワカサギが遡上していることが昨年の調査でわかりました。もしかすると、住み良い越冬場所を探して旅をしているのかもしれません。
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