溶岩と硫黄の影響が大きい知床の川〜タンネウシ6月号2025
合地 信生
知床半島の川は長さが短いため、一般の川の下流にあたる堆積場がほとんどなく、急流で海に注いでいます。では、どういう場所を川は流れているのでしょうか?
溶岩の縁を流れる川
1つのタイプは溶岩の縁を流れる川です。ウトロの溶岩と海底堆積層の境界を流れるホロベツ川がこのタイプです(図1)。知床の溶岩は流れにくいタイプなので、溶岩が流れた場所は中央部が小高い地形になっています。雨が降ると雨は周辺部に流され、そこに雨水がたまり、流され、そして周辺部川底が削られて川が成長します(図2)。
ホロベツ川の場合ですと溶岩の周辺部は溶岩より柔らかい海底火山が噴火した古い時代の堆積層です。その結果 深い沢と規模の大きな川が生まれました。このような溶岩の周辺部を流れる川として、白イ川やそれが合流するイワウベツ川も同じタイプです。水量多く、透明度の高い川です。
溶岩の中央を流れる川
2つ目のタイプは溶岩の中央部を流れる川です(図3)。赤イ川の上流域がこのタイプを代表する川です(図1)。上流に硫黄が噴出しており、硫黄が溶けて水が亜硫酸になり、溶岩の鉄が水に溶けます。そのため川の色が赤くなり、酸っぱい味がします。下流になると淡水の雨水が混じり、pH (酸性度)はだんだんと中性に変化します。 その結果、鉄が水に溶けなくなり、川底に褐鉄鉱が沈殿します。
硫黄の噴出場所は、溶岩の中心部に多いようです。流れた溶岩は周りから固まり、最後まで溶岩が流れた溶岩流の中心部は溶岩の勢いが落ちるとトンネル上にしばしば空洞が生まれます。
そこに硫黄を含む地下水が流れました。雨水の一部が溶岩に染み込み、溶岩の割れ目から湧き出したタイプなので、表面を雨水がそのまま流れたタイプ1の川に比べ、水量は少ないようです。褐鉄鉱を沈殿するこのタイプの川は、硫黄と密接に関係し、周りの岩石と反応しながら溶岩流の中央部を赤色で小規模に流れる特徴があります。
知床五湖からカムイワッカへの道路には、硫黄成分の多い知床硫黄山の溶岩上を流れている小さな川がたくさんあります。そこには褐鉄鉱鉱床が広がっており、鉄が不足した戦時中には詳細な調査が行われました。
知床半島は新しい火山の半島です。浸食作用はほとんど進んでいなく、川の流れは溶岩の流れと硫黄の噴出に大きく制約されています。白イ川と赤イ川は名前がそのまま川の性格を表しています。
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