サケの仲間 1 カラフトマス〜タンネウシコラム5月号

サケの仲間 1  カラフトマス

三浦 一輝

知床半島の川を遡上するカラフトマス

カラフトマスという魚をご存知ですか?サケの仲間で、オホーツク海周辺では“オホーツクサーモン”というブランド名でも呼ばれて流通しています。国内では主に根室海峡やオホーツク海に流れ込む北海道北東部の川に産卵のために遡上します。シロザケよりも川を遡上し始める時期が早く、斜里町周辺の川では、8月中下旬頃から多くのカラフトマスが遡上する姿を見ることができます。

シロザケとは異なる生態
カラフトマスは、川で生まれ、海で育ってまた川に戻って産卵するという生態を持つ点でシロザケと似ています。しかし、カラフトマスの生態にはシロザケと異なる特徴的な点があります。1つは海で育つ時間の短かさです。シロザケは川から海へ降り、成熟するまでに2〜8年かかります。一方でカラフトマスはほぼ全てが2年で成熟して川へ還って来ます。このため、奇数年に還って来るカラフトマスと偶数年に還って来るカラフトマスで繁殖集団が分かれているため、漁獲や遡上量の多い年と少ない年が交互にやってくることが多いです。2つ目は、母川回帰性の低さです。シロザケの場合、ほとんどが生まれた川に還って来ます。それに対してカラフトマスは、生まれた川に戻る個体もいる一方、生まれた川とは異なる川を選んで遡上する個体も多いです。地域や年によっては95%以上の個体が生まれた川と異なる川に遡上していると見積もられた例もあります。

カラフトマス卵の隠れた役割
最近の傾向通りであれば、2020年はカラフトマスが多く還ってくる偶数年にあたります。多い年だと、川が真っ黒になるくらいのカラフトマスが遡上することで、川の中で渋滞がおきるほどです。そういう時には、たくさんのカラフトマスが、限られた良い産卵場をシーズンの中で繰り返し使って産卵します。このため、前に産んで川底に埋められていた卵が、別のメスに掘り起こされて流されてしまうこともしばしばです。掘り起こされたり、産卵の際にこぼれ落ちた卵は、オショロコマのような他の川魚や、川に潜れるカワガラスのような鳥の餌になります。したがって、よく知られているように、遡上魚やその死骸が他の生き物の餌となって他の動物を支えるだけでなく、カラフトマスの産んだ卵も他の多くの生き物を支えているのです。

タンネウシ5月号(表面)

 

タンネウシ5月号(裏面)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

横山

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です