タンネウシ犬も顔負け? 足跡の主を知る方法〜タンネウシ11月号

犬も顔負け?足跡の主を知る方法

村上隆広

タヌキと思われる足跡

DNA解析技術の進歩
ある朝、犬と散歩していたら、鼻を空にむけてクンクンと匂いを嗅ぎ、そして後ろを気にしてじっと待っていました。その方向を見てもなにもありません。ところが、しばらくしたら、犬を時々預かってくださっている方が後ろからやってきたのです。犬が気づいたときには姿もみえず、500 m以上離れていました。犬は空中を漂ってきたわずかな香りから、その人がいると気づいたのでしょう。そんな犬の嗅覚にも匹敵するようなことが、DNA解析技術の進歩によってできるようになってきました。水中や土壌、さらには空中にあるDNAを採集して、それがどの動物のものなのかがわかるようになってきたのです。川の水を泳いでいる魚、土壌中の微生物、空ではばたいた鳥などのDNAが採集され、種の判別に成功した例があります。信じがたいことですが、魚の体や微生物、鳥の体からそれぞれ水中、土壌中、空気中にそれぞれの動物の細胞が残り、採集した水や土や空気をろ過したものからDNAが検出されるのだそうです。犬も顔負けの技術といえるでしょう。これらは環境DNAとよばれ、これまでにさまざまな分野で応用研究が行われてきました。

足跡の主を知る
私が専門としている哺乳類でも環境DNAを使った研究が行われています。京都大学の木下豪太博士のグループでは、冬に哺乳類の足跡のついた雪を採集し、そこからDNAを抽出して足跡を残した種を識別することに成功しました。テンやキツネ、シカ、犬などです。シカの足跡のように識別が簡単なものもありますが、テンは他のイタチ類との識別が難しい場合があります。また、北海道では外来種のニホンテンが在来種のエゾクロテンの生息範囲を狭めてゆくことが心配されています。これら2種のテン類は足跡の形もサイズもほとんど同じで、雪上での識別はまず不可能でした。このような場合には足跡からDNAを採集して識別できれば調査が進展することでしょう。

こんなところにもDNAが
偶蹄目が食べた草に残した唾液、動物たちが水を飲みに来た水たまり、採集したヒルの体内に残っていた血など、思いがけないところからDNAが採集されています。また、目撃の難しい絶滅危惧種がその地域に生息しているかどうかを調べるにも有効な方法として期待されています。まだ採集や分析の技術に課題もあるようですが、アイディア次第でさらに応用範囲が広がりそうですね。

タンネウシ11月号(表面)

 

タンネウシ11月号(裏面)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三浦

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