備えあれば憂いなし〜タンネウシコラム11月号

備えあれば憂いなし

村上隆広

埋めたクルミを春に掘り出すエゾリス

貯食する動物たち

いよいよ秋も深まってきました。サンマやサケもおいしいし、栗や芋など秋の味覚を何かと食べ過ぎてしまいますね。さて、動物たちにとっても秋は冬に備えてよく食べる季節です。でも、すぐに食べずにたくわえる種類もいます。リスやネズミなどの哺乳類、カケスなどの鳥が貯食をします。博物館のまわりではエゾリスがクルミなどをせっせと食べている姿を目にしますが、一方で地面に埋めたり樹洞などに隠したりします。私は忘れっぽいたちなので、春に埋めていたクルミを掘り出しているエゾリスを見ると、「よく埋めた場所を覚えているなあ」と尊敬してしまいます。彼らは食べ物をどのように蓄え、その場所を覚えているのでしょう。

リスの運んだクルミの行方は?

国内ではエゾリスと近縁のニホンリスの貯食について詳しく研究されています。森林総合研究所の田村典子さんは、小さな電波発信機をつけたオニグルミの実100個をニホンリスがどのように食べるのかを観察しました。すると、40個はすぐに食べられ60個はあちこちに運ばれて貯食されました。60個の隠し場所は樹上と地上がおよそ半分ずつだったそうです。リスは貯食したクルミの多くを食べていったものの、1割くらいは5月まで残っていたということです。やはり、忘れてしまうこともあるのですね。しかしリスは隠していたクルミの場所の多くを覚えていたといってよいでしょう。リスはどうやってそれぞれの場所を覚えているのでしょうか。

リスの記憶術のひみつ

カリフォルニア大学バークレイ校では、やはりエゾリスと近い種類のハイイロリスが、どのように貯食場所を記憶しているかを研究してきました。その結果、彼らは埋めた場所のすぐ近くの目印より、少し離れたところにある木や倒木の位置によって、貯食場所を記憶していることがわかりました。さらに別の研究では、彼らが食べ物の種類によってグループ分けして隠していることもわかりました。たとえばこのあたりはクルミ、このあたりはアーモンドというようにそれぞれを分けていたのだそうです。賢いですね。かといって、あまりまとめて同じ場所にたくさん隠すとネズミなどに横取りされてしまいます。適度にまとめて、適度にばらけさせるのがよいようです。しかし、ばらけた木の実の一部は忘れられたまま春を迎え、芽を出すことになります。それはわざわざ種を運んで埋めるのと同じ事です。私のような忘れっぽいリスは、森の木々にとってはありがたい存在かもしれません!

タンネウシ11月号表面
タンネウシコラム11月号裏面

平河内

 

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