渓流に潜る鳥 “カワガラス”〜タンネウシ4月号


三浦 一輝

カワガラス(2021 年 9 月 17 日ペレケ川、早津栄里 撮影)

知床の川を歩くと、「ビッ、ビッ」と 鳴く黒っぽい鳥を見かけます。声の主はカワガラスです。名前にカラスとつきますが、 街中で見る黒いカラスの仲間ではなく、大きくはスズメの仲間です。北海道から九州までの渓流に棲みます。地形が急峻な知床半島の川では、下流部でも岩がゴツゴツして流れが速いため、河口近くでもその姿を見ることができます。

潜水の名人!
カワガラスを観察していて驚くのは、流れの速い川の瀬に飛び込み、 時には急流に流されながら潜水をすることです。最初のうちは流れにのみこまれて死んでしまうのではないかと心配になりますが、ケロッとした表情で再び水面に現れます。彼らはそんな風に潜ったり、歩き回って顔だけ水につけながら、川底にいる昆虫や小魚を捕まえて食べるのです。

マスの卵は秋のご馳走!?
秋頃になると、知床の川にカラフトマスが遡上してきます。遡上数の多い年に は、川が真っ黒になくらいやってきます。カワガラスが餌を採っていた川の瀬もカラフトマスでびっしりと埋め尽くされてしまいます。自分よりもはるかに体の大きな魚に埋め 尽くされた川で、カワガラスはちゃんと潜水して餌をとれているのでしょうか。観察してみると… いました!ちゃんとカラフトマスの間を縫って潜水しています。なにやら、オレンジに光るもの咥えて水面に戻ってきました。カラフトマスの卵を咥えています!石の上に乗って美味しそうにいくらを食べ ていました。他のカワガラスを観察しても、同じようにいくらを食べる姿が見られました。人と同じように、カワ ガラスにとってもマスの卵はご馳走のようです。
カラフトマスは産卵の時に、川底を掘って卵を産みます。 この時に 、掘った穴に卵がうまく入らずに一部が流されてしまうことがよくあります。 また 、 掘った場所にすでに別のメスの卵が産み落とされていた場合、先に埋められていた卵は掘り返されて 流されてしまうことがあります。カワガラスはこのこぼれて流された卵を狙い、得意の潜水で拾って食べているようです。サケやマスが多く遡上する知床周辺地域ならではのカワガラスの姿かもしれません。秋になったら 、 ぜひ川を覗いて見ください 。小さな鳥がいくらを求めて 急流に潜る姿を見ることができるかもしれません。

タンネウシ4月号表面
タンネウシ4月号裏面

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です