身近な排水路に何がいる?〜タンネウシ2月号

臼井 平

農地開拓と排水路
 斜里町の市街地には、数多くの水路が流れています。斜里は地名の元となったアイヌ語「シャル(アシの生えているところ)」のとおり、かつては大湿地帯でアシ原でした。その土地に先人たちが鍬を入れ、無数の暗渠と排水路を張り巡らせて土地を乾燥化させた おかげで、斜里は北海道有数の農業地帯となりました。

 なぜ水路に沢山のサケが??
  排水路に生息する魚に興味を持ったのは昨年の秋に遡ります。東一号排水路脇を歩いていたところ、大きな水飛沫を見つけました。水鳥かと思い近寄ってみると、そこには複数のサケが 遡上していました。「産卵する場所も無いのに不憫だなぁ」という気持ちと 共に、このサケがどこから遡上してきたのか興味を持ち始めました。水路を辿ってみると、どうやら斜里高校近くで水門を通して斜里川と合流しており、そこから迷入してきたようでした。東一号排水路は斜里川と直通しており、ひいてはオホーツク海とも通じている ことになります。水路の下流域は潮の干満の影響を受けているため、淡水性魚類のほか、汽水性、もしかすると海水魚も入り込んでいる可能性が出てきます。冷涼かつ流れのある斜里川では生息が困難な魚種が排水路で繁栄をしているかもしれません。2023 年 11 月 2 日、これは面白そうだと思い電気ショッカーを背負って排水路へ飛び 込んで調査をしてみました。

サケ!ワカサギ!トゲウオ!アメマス!
多様性豊かな排水路!
  電気ショッカーをかけながら排水路を歩いてみると、おびただしい小魚の群れが確認できました。電流で気絶した魚を掬ってみると、なんとワカサギ です。ワカサギは緩やかな流れを好むため、流れのある斜里川から、流れのほぼ無い排水路に入り込んだのでしょう。おそらく、今回確認できたトゲウオ(トミヨ属淡水型か汽水型)も同じ理由かと思われます。また、相当数のサケの遡上が確認でき、産卵行動も観察できました。産卵している場所の川底をみると、コンクリート床にうっすらと砂利が堆積しています。もしかすると除雪で雪を排水路に投げ入れる際に、小石やレキも一緒に入り込んで堆積し、それがサケの産卵床作りを可能にさせているのかもしれません。そのほか、アメマスやヤマメ(サクラマス幼魚)も捕獲されたため、「排水路で産まれた」サケ科魚類の存在も示唆 されました。また、サケやワカサギは かなり排水路の上流まで遡上しているようで、国道を超えて「(株)片山電気商会」脇の水路まで遡っていることが確認できました。コンクリートに囲まれた排水路にも魚たちはたくましく命を紡いでいることがわかりました。

タンネウシ2月号表面
タンネウシ2月号裏面

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